5月6日~11日まで、韓国ソウルとナミ島で行われた、ナミコンクール授賞式と受賞者参加イベントに行ってきました。
ナミ国際絵本イラストレーションコンクール と書けばおよその内容を表せるのかなと思いますが、プロ・アマ問わずどの国からでも応募できる子どもの本のイラストレーションのコンペで、2年に1回の開催。今回が4回目です。
「くろいの」の原画ができた時にタイミングが良かったこともあり、エントリーしました。
まず入選の連絡が来て、今回は98カ国1844人の応募があった中の106人の中に選ばれたとのこと。それから出力(私は銅版画の刷り)を送り、2ヶ月後にパープルアイランド賞への入賞を知らせるEメールが届きました。寡作な私にとっては受賞そのものが滅多にないことでしたので、なにはともあれ、大喜び!!
ナミコンクールの賞は4つあります。グランプリ、ゴールデンアイランド(2名)、グリーンアイランド(5名)、そしてパープルアイランド(10名)。
授賞式参加のための交通費が出るのはグリーンアイランドまで。
それで私は授賞式は「タイミングが合えば」行きたいな、くらいに思っていたのですが、事務局から招待メールが来て考えが変わりました。約1週間の日程で、宿泊費食費はナミ持ちという内容だったからです。以前参加したシャルジャでの展覧会で、招待作家同士の交流がとても良かったことが蘇り、思い切ってフル参加することに。
友人の同行がOKだったので韓国で「くろいの」を翻訳出版予定の作家・翻訳家でもある金貞淑さんに一緒に参加してもらいました。
いつもお世話になっている金貞淑さん。「ねえ だっこして」の韓国版テキストと出版も。
ソウルに着いて、まずは金さんと合流。翌朝ホテルで具体的な旅程が渡されました(!)。6日間の日程のうち最初と最後がソウル観光、中の4日間が実質的なイベント参加でした。展示はソウル(中心部のショッピング街やオフィス街と隣接した、ビルの中の大きなギャラリー)とナミ島の2箇所とのこと。
ソウルでの展覧会は「絵本NOW」というタイトルで、ナミコンクールの受賞者の作品に加え、国際アンデルセン賞作家と、2017年のBIB展(ブラティスラヴァ国際絵本原画展)受賞者の展示が組み合わさったものでした。2019年7月7日まで、開催されています!(サイトへのリンクが記事の下にあります)
グランプリのアンドレ・レトリアさん。「戦争」という絵本。作家であるお父様の協力を得た作品。
かとうひろゆきさんの「ミステリートレイン」鉄道会社のPRのために作られた絵本。そのプロジェクト自体もミステリアスで面白い!
デイル・ブランクナーさん。若くて大変お話が上手で、物作りの話に共感する点が多かった。絵本は「もしもお隣さんが宇宙人だったら。。。」という内容で、いろんな国籍の人が住む南アフリカならではの視点だそう。
「なまけものの本」のなまけスペース。
ウルシュラ・ポルシンスカさん。子供の頃おじさん夫婦に海に連れて行ってもらったんだけど、大人たちって遊びもしないでゴロゴロしている。あれは何を楽しんでいたのか?という謎を、大人になったウルシュラさんが子供だった自分に伝えるような、絵本なのだとか。
ロマーニャ・ロマナイシンさん。ヘミングウェイの「武器よさらば」の装丁。平和の象徴でもある日用品と、武器を”ヴィジュアルライム”(似たものをくっつける遊び)という手法で構成。ウクライナは数年前に空爆を経験している。その頃に「ふつうの日常」が大事なんだと改めて気付いたとのこと。
アンドリ・レシフさん、ロマーニャさんと夫婦で、アグラフカ・スタジオというユニットで活動している。今回は個人作品でそれぞれ入賞!経歴をみると、2010年以降、ボローニャラガッツィなどの賞の常連さん。「絵本NOW」でも、2017年のBIB金碑作家(ユニットで受賞)の展示もあった。
マルコス・ガルディオラさん。インドのタラブックスで2回レジデンスを経験。この本は、左ページに元の顔、右ページにその人の希望をヴィジュアル化した絵が描かれている。ボッシュの絵などからインスピレーションを得て、「欲望=よいもの」として描いたら?と思ったそうです。
ヴェロニカ・ナクスさんの絵の写真が撮れなかった!右側の壁の奥。細かいエンボスを施した紙に鉛筆やコラージュで繊細な絵をつくっている。今回一番よくお話させてもらった方。向かって左は今回来られなかった、イランのヌーシン・サファクフさん。他にもソル・アンデュラーガさん(この方もラガッツィを取っている)とも話すことができた。
会場に着くとマジックが手渡され、受賞者それぞれが自分の作品が展示されている壁にドローイングやサインをしました。私も描いていると、通りがかりの人やツアーの参加者(受賞者と審査員の他に、過去の審査員や、IBBYの各国の代表やBIBの委員長が参加していました。後半に判明)が「いい作品ね!」「受賞おめでとう!」と声をかけてくれて嬉しかったです。また、小学1年生くらいの女の子が、「くろいのってなんですか?」と質問をしてくれたのもとても可愛かった!
散々迷って、下の方に描きます!写真は金さん撮影。
くろいのを描いています。
壁が完成しました。
会場では一般の方向けのサイン会がありました。総勢12名の作家が集合!
たくさんの親子連れや絵本ファンらしき方々が来て、私も時間いっぱいまで書かせてもらいました。サイン帳や紙もOKだったので、紙片のお客さまには「くろいの」のポストカードを進呈しました。
受賞者ずらり。(写っていない人が3人います)
手前から、ウルシュラさん、ヴェロニカさん、イゴール・オレイニコフさん(2018年アンデルセン賞画家賞受賞)、グリーンアイランド賞のキム・ジヨンさん、私
手前はビクトリア・フォーミュラさん。ロシアでも第一線で活躍している人気作家だそうです。クラシックな画風なのに、コミック風のグッズも作っていてお茶目。
こんなカタログもあります。
絵本の展示コーナー。かわいい!「ねえだっこして」の韓国語版がありました。
同じ日に行われたレクチャーは、審査員2名が司会となり、受賞者3名の話を聞くという内容でした。受賞者がグランプリのアンドレ・レトリア(André Letria)さん(ポルトガル)、グリーンアイランド賞のロマーニャ・ロマナイシン(Romana Romanyshyn)さん(ウクライナ)、同じくグリーンアイランド賞のデイル・ブランクナーさん(Dale Blanknaar)さん(南アフリカ)。聞き役の審査員はピエト・グロブレ(Piet Grobler)さん(南アフリカ)、クラース・ヴェープランク(Klaas Verplancke)さん(ベルギー)。とても興味深い内容だったのですが、また改めて書けたらと思います。一つだけ書くと、「コンピューターを使いこなしてどのように製作しているか」という話題が今時だなあと思いました。
3人の絵本制作についてのお話。編集者と戦うクリエイターマインドについて(笑)。戦争や歴史を扱う時の気持ち。専門的な内容が続くなか、「仕事中に煮詰まった時、あなたはどうしますか?」という質問が出て和みました。
ジップラインの乗り場にて
ソウルで2日間滞在した後、ナミ島に移動しました。ソウルから1時間半ほど観光バスでの移動。バスでは、金さんと相談して、あえて他の受賞者や立場の違う方とそれぞれ隣り合わせに座ろう!ということに(笑)おかげで移動中も貴重な交流の時間になりました。
ナミ島への船着場では、なぜかジップラインを勧められました。おもてなしですね。一度小さな無人島にジップラインで到着してそこから結局船に乗りましたが、そんな細かなイベント中も待ち時間があったりして、ささやかな交流のきっかけとなりました。
入選者の作品とプロフィールがデザインされた屋外パネル。結構長期に展示されるらしい。
さてナミ島ではまずお昼を食べ、それから展示場所に移動。見つけたのは、屋外に設置されたパネルでした。入選者の作品が美しくデザインされていました。子どもの遊具のすぐ側で、遊びながら見られるような場所です。もちろん、親も見られるでしょう。なんとも、ナイスアイデア!(お金はかかりますけど!)
入賞者のオブジェ。絵をいい感じに加工してくれています。
ここでも何を描こうか迷い、絵の中になかった椅子を描きました。
入賞者たちのオブジェは、大きな本の形をしていました。ここでもペンを渡されてドローイング。
さてさらにその翌日が、授賞式本番でした。
昼食のレストランで、ナミコンクールの発起人(?)の康禹鉉さんに会いました。康さんは、ナミ島を「絵本の島」にした張本人なのです。今は次なるプロジェクトとしてチェジュ島を手がけているそうです。(その康さんと、金さんが古いパパ友繋がりだったそうで!不思議なご縁だなあ…と思いました。)
ナミブックフェスティバルのイベント案内地図。韓国やデンマークの子供むけパフォーマーが、複合的なパフォーマンスを繰り広げていた模様。こちらは5月末まででした。アンデルセンにまつわる美術館や、2017年のナミコンクール受賞作品も展示されていて、日程中に全部を見られませんでした。また見に行きたいな〜。
ナミコンクールの授賞式は、実は、ナミ島でその日始まる「ナミブックフェスティバル」のオープニングイベントの一つでもありました。近年、国際アンデルセン賞のスポンサーにもなったナミ島(自治体ではなく、私企業)で、デンマークと韓国の友好も兼ねて、子どもの本のお祭りを開いているのです!デンマーク大使も来ていました。
授賞式の開幕
右から、康禹鉉さん、審査員長のロジャー・メロさん、審査員のピエト・グロブレさん、私。
グランプリのアンドレ・レトリアさんから、受賞メッセージ
韓国の帽子と扇子で記念撮影。
授賞式は皆本当にうれしそうで、緊張しながらも、終始ニコニコしていました。いただいた盾が、陶器製で重くて、写真映えするように持ち直すのに、みんな一苦労していましたが…(笑)
リボンカットならぬ、餅カットのセレモニー。この餅、けっこう硬いんですけど、みんなで手でちぎり、それを食べるんです。私の右から順にかとうひろゆきさんの奥様、かとうさん、金さん
授賞式が終わってホッとして、恒例の餅切りセレモニーに参加したあと、夕食はガーデンパーティー。その頃には私も色々な方に挨拶していたので、ようやく一緒に和んで、おしゃべりできました。でも、私は翌日の飛行機の時間があって、その夜にはソウルに帰らなければなりませんでした。
みなさんに一通りお別れの挨拶をして、名残惜しくも夜の船でソウルへ!
ソウルのホテルではあとは帰るだけとなった金さんと私は、深夜まで女子会。
旅を満喫致しました。
それから、記事内には触れることができませんでしたが、滞在中、審査員の広松由希子さんからも色々なお話を伺い、ほぼ初めてのコンペ受賞の日程中でしたので、お世話にもなりとても心強かったです。
韓国のスタッフもみな真面目で親切で、とても良い印象をもって帰ることができました。
ソウルでの展覧会は7月7日まで開催中です。こちらにイベントの映像なども掲載されています。
https://www.facebook.com/picturebooknow/
https://picturebooknow.modoo.at/?link=7885ohp6
ナミコンクールのホームページ(応募要項など)
http://www.namiconcours.com/main.php
ソウル展でもらったカタログ(受賞者のみ載っています)と、グッズ。
賞状をもらうの、数十年振りです。盾が素敵なのが嬉しかったです。